保育園での食中毒防止のためのポイント


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梅雨の季節になりました。この時期から夏の終わりまでは、食中毒が多発する危険シーズン。とくに幼稚園や保育園など、大量の給食を提供する施設で起こる食中毒は、被害が大きくなりやすく、しっかりした予防と対策が必要になってきます。
そこで今回は、食中毒の種類や注意すべき食品について詳しく学びながら、給食時の食中毒対策、万一発生した場合の対処法など、保育士が心得ておきたいポイントを確認していきたいと思います。
これからの季節、子どもたちの健康と食の安全を守るために、ぜひ役立ててくださいね。

食中毒を起こす菌と、原因になりやすい食品

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食中毒の原因は細菌やウイルス、寄生虫、自然毒、化学物質などさまざまですが、とくに6月から9月にかけて多く発生するのが細菌の繁殖による食中毒。
加熱すれば安心と思われがちですが、中には熱に強い細菌もあるので注意が必要です。
それでは、食中毒を起こす主な細菌の特徴と、感染しやすい食品についてみていきましょう。

●サルモネラ菌●

十分加熱していない肉、魚、卵などが原因となります。
乾燥に強く、熱に弱いのが特徴。
食後6時間~48時間で、腹痛、嘔吐、下痢、発熱、頭痛などの症状が出ます。

食品例 → 生卵、オムレツ、卵の加工品、牛肉や鶏肉のたたきなど

●腸炎ビブリオ●

海水に住む魚や貝類が原因となります。
真水や熱に弱く、塩分のあるところで繁殖します。
食後4時間~96時間で、腹痛や激しい下痢が起こります。

食品例 → 刺身、寿司など

●黄色ブドウ球菌●

人の皮膚や、口、鼻のなかにいて、傷やニキビを触った手指などから感染します。そのため、手作業で調理する食べ物が原因となります。
熱に強い毒素を持つため、加熱しても食中毒を防止できないことも。
食後30分~6時間で、腹痛、嘔吐などの症状が出ます。

食品例 → おにぎり、調理パン、巻きずし、和菓子など

●カンピロバクター●

生野菜や水、十分加熱していない肉(特に鶏肉)などが原因に。
乾燥に弱いため、加熱すれば菌は死滅します。
食後2日~7日で、腹痛、下痢、嘔吐、発熱や筋肉痛などの症状が出ます。

食品例 → 加熱不足の焼き鳥、生乳、生水など

●腸管出血性大腸菌(O157、O111など)●

十分加熱していない肉、生野菜などが原因となります。
熱に弱いので、加熱をしっかりすれば防止できます。
食後12~60時間で、激しい腹痛、下痢、血便などの症状があり、重症になると命にかかわることも。
食品例 → ハンバーガー、ローストビーフ、サラダ、サンドイッチなど

●ウェルシュ菌●

酸素を嫌う菌なので、加熱調理のあと、長時間放置した料理に多く発生します。
調理後に室温で放置しない、再加熱のときはよくかき混ぜるなどで予防できます。
食後6時間~18時間で、腹痛、下痢を起こしますが、嘔吐、発熱は少なく、1、2日で回復します。

食品例 → カレー、シチュー、スープなど

食中毒を防ぐための3つのポイントとは

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食中毒を防止するには、調理段階における細心の注意が必要です。
農林水産省が提唱しているのは、次の3つのポイント。
普段の生活で感染しないためにも、頭に入れておきましょう。

(1) つけない

細菌がついているかいないかは、見てわかるものではありません。ただ、つけないために心がけることはできます。まずは手洗い。そして洗える食材はよく洗い、まな板、包丁などの器具や食器も清潔に。原因になりやすい肉や魚は、他の食材と分けて包み、保存します。

(2) 増やさない

生ものや、調理したものを室温で放置すると菌が繁殖します。すぐに食べないものは必ず冷蔵庫で保存し、解凍するときも常温ではなく、冷蔵庫内や電子レンジで行うこと。

(3) やっつける

細菌は熱に弱いものが多く、大部分は十分に加熱すれば死滅させることができます。
調理の際は食材の中心部までしっかりと熱を加えることが大切。電子レンジも活用して。

配膳時、食事時はこんなことに気をつけて

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では次に、食事が出来上がってから食べるまでの間に、保育士が注意したいことをあげていきます。給食時はバタバタしてつい忘れてしまいがちな手順ですが、菌はどこにでもいるもの。配膳から後片付けまで、清潔を心がけましょう。

●配膳ワゴンは使う前に水拭きする。ワゴン置き場はごみ置き場などとは離すこと。
●保育士と子どもはしっかり手洗いをし、ペーパータオルで拭く。
●専用の清潔な台ふきんで、テーブルを水拭きする。
●配膳のときはエプロン、三角巾を着用し、毎日洗濯する。
●爪は短く。手指に傷があるときは配膳はしない、または使い捨て手袋を着用する。
●配膳はトレイで。お皿や椀を個々に運ばない。
●子どもがスプーン、箸を共用しないように気をつける。
●スプーン、箸が床に落ちたときは新しいものを使う。
●床に落ちた食べ物を子どもが触らないように気をつける。
●食事後は速やかに、子どもの口の周りと手指をウェットティッシュで拭く。
●食器を下げたら、清潔なふきんでテーブルを水拭きする。
●床の食べこぼしを取り除き、必ず水拭きする。
●片付け、掃除が終わったら、手洗いを行う。

配膳の手伝いを園児が行う園もありますが、当番の子どもの健康状態にはとくに注意することが大切です。
下痢や嘔吐をした子どもは給食の当番を2週間控えるようにし、感染性胃腸炎の流行する季節には、子どもによる配膳は避けたほうが良いでしょう。

食中毒の症状と応急処置

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これまで述べてきた点に気を配っていても、万が一、食中毒とみられる症状が発生したときは、どう対処すればよいでしょうか。
最後に食中毒の主な症状と、医療機関にかかるまでの応急処置をおぼえておきましょう。

■ 食中毒を疑う症状

腹痛、吐き気、嘔吐、下痢が最もよく見られます。
下痢は、水様便や粘液・血液の混ざったものが多く、一日数回~多い時は数十回。
発熱や頭痛、筋肉痛を伴うものもあり、風邪と間違えて処置が遅れる場合もあるので、注意が必要です。
また、潜伏期間も食後30分から一週間以上と幅があるため、原因食材が不明なこともよくあります。
原因に心当たりがなくても、症状から食中毒が疑われたら、速やかな対応が大切です。

■ 園でできる応急処置

最も警戒すべきなのは、下痢や嘔吐を繰り返して脱水症状になること。水やお茶、スポーツ飲料などで、こまめに水分をとらせましょう。ただし冷たい水や清涼飲料水は、腸への刺激が強いので与えないこと。
また、嘔吐がある場合、吐いたものが気管支につまり、呼吸困難や肺炎を起こす危険も。
寝かせるときは仰向けは避け、吐きやすい横向きにします。
下痢が激しいからと、市販の下痢止めを飲ませるのは禁物。下痢止めは、細菌や毒素を体内にとどめることになり、症状が悪化することもあります。もし飲ませてしまったら、医療機関を受診する際に、必ずその薬を持参すること。

■ こんなときはすぐ病院へ!

もし以下のような症状が見られたら、早急に医療機関を受診しましょう。

・一日10回を超える下痢
・フラフラしている
・ぼーっとしたり、受け答えがはっきりしない
・尿の量が減ったり、12時間以上出ていない
・血便が出る
・手足がむくんでいる
・嘔吐が止まらない

まとめ

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幼稚園や保育園などでの集団食中毒は、抵抗力の弱い子どもだけに被害が広がりやすく、O157のようなものは家庭にも感染が広がるおそれがあります。
一年を通して報告されている食中毒ですが、気温も湿度も上がってくるこれからの季節は、細菌が増えるためには格好の環境。
園内が、子どもたちを感染から守り、安心して飲食できる場となるよう、保育スタッフ全員がつねに危機意識を持って保育にあたっていきたいですね。


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