保育士不足に国が緊急対応。人材確保の「三つの柱」とは?


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深刻な保育士不足が叫ばれる中、厚生労働省はその確保にむけ、緊急対策を打ち出しました。
安倍政権の出生率目標は現在の1.4を1.8に高めること。そのためには、共働き世帯の育児支援を強化する必要があります。
そこで、女性が育児と仕事を両立できるよう、保育の受け皿を50万人増やすという目標を掲げ、不足する9万人の保育士確保につなげるため、対策を実行するようです。
その費用として、まずは約714億円を今年度の補正予算案に盛り込みました。

この緊急対策には、ポイントとなる「三つの柱」があります。
今回は、具体的にどのような対策が練られているのか、詳しく解説していきます。

緊急対策の具体的な施策とは

それでは、三つの柱をひとつずつ見ていきましょう。

1) 潜在保育士の掘り起こしに向けた施策

「就職準備金として一人当たり15~20万円を貸し付ける。ただし保育士として2年間勤務など、条件を満たせば返済は免除される」

現在、働いている保育士は全国に約40万人。けれど有資格者でありながら、育児などで離職している潜在保育士は、約70万人ともいわれます。そこでこれらの保育士の復職を促す目的で、費用の貸し付けを行います。引っ越し費用、仕事服の購入、交通費などに充てることを想定しています。
さらに、保育士の子どもが、勤務先や近くの保育所に優先的に入れる仕組みも。保育料は上限3~4万円で半額となり、保育士が子育てをしながら就業できるシステムを整えていきます。

2) 新たな保育士の確保に向けた施策

「無資格の保育補助員を雇用する際、1人当たり300万円を3年間、保育所に貸し付け、その保育補助員が就業後3年以内に保育士資格を取得した場合、返済が免除される」

日中、保育所で働き、夜間に専門学校で保育士資格の取得を目指す人を積極的に支援する施策です。この貸付金によって保育所は補助員に給与を払い、資格取得後には即戦力として働いてもらうことが可能。
また、2010年から施行されている「就学資金貸付制度」を強化し、保育士の資格取得を費用面で支援する仕組みを確立することも発表されました。

3) 離職を防止するための施策

「保育士の書類業務の効率化を支援するため、保育所でのパソコンや業務管理ソフトの導入費用として80万円~100万円を助成する」

保育士の離職の一因として、業務負担の重さがあげられます。とくに事務仕事の負担が大きいため、保育所のICT化を促し、事務作業省力化をはかり、保育士の負担を減らす狙いです。
また、保育士の待遇改善として、給与について、「国家公務員の給与改定に準じた内容を公定価格に反映する」ことが発表されています。

望まれる保育士の処遇改善

これらの緊急対策は、おもに資金の援助、業務負担の軽減が中心となります。
けれど、保育士確保のための最も大きな課題は、保育士の待遇改善であることに疑いはありません。保育士の平均月給はおよそ20万円といわれ、全業種平均と比較すると10万円ほど少ないのです。まずはこの低賃金問題が改善されない限り、根本的な保育士不足は変わらないという声も上がっています。
今回の緊急対策についての、ネット上での意見はさまざまですが、「待遇改善」「賃金アップ」を先に、という意見がほとんどのようです。一部を見てみましょう。

「復職時に一時金がもらえても、働いてからの給料が低ければ意味がないのでは」

「新しい保育士をいくら増やしても、同じ勢いで減るのではどうにもならない。まずは労働条件を改善して、安心して長く働ける環境を作らないと」

「とにかく賃金が低い。そこを見直さずに、遠回しな援助をしても、穴の開いたバケツに水をくむようなもの。まずは穴をふさいでほしい」

「良い動きだとは思うけれど、やはり一番効果的なのは賃上げ。平均を大きく下回る賃金をなんとかしてほしい」

まとめ

国が打ち出した緊急対策。しかし保育の現場では、「緊急」というにはかなり悠長な施策だと受け取られているようです。
ネットの声にあるように、保育士不足のもっとも深刻な原因である待遇について、抜本的な見直しをしない限り、政府の計画通りの人材確保は難しいのではないでしょうか。
今後、処遇改善についての、さらに具体的な施策が求められています。


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